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2009年 02月 09日
安室奈美恵、安室ちゃんの曲を聴くと、その姿を見ると、いつも、同じ気持ちになる。楽しくて、すっごく嬉しいのだけれど、同時に切なくて、とても悲しい。色んな感情が綯い交ぜになって、ある日々の毎日の出来事がフラッシュバックのように頭を巡って、息が詰まりそうになる。
もう慣れたことだ。ただ、それは夢のような記憶でもあり、思い出すこと自体が苦痛になるようなやわらかな悪夢のようなものでもあり、至極複雑な側面を持っている。 ** ** ** 1995年、私は小学校5年生で、札幌市の北区に住んでいた。 ** ** ** 札幌市北区、北大の農学部のキャンパスに隣接して、私の家はあった。例によって、いわゆる官舎である。団地には学校の友達がたくさんいて、知り合いでない人なんていなかった。あいさつの絶えない、温かな空間。農学部の農場には常に牛がゆっくりと歩を進めていた。団地から裏に少し歩けば北海道立北高校があり、夏には行灯行列がバス通りをゆく。家の窓からは藻岩と手稲の山がすぐ近くに見える。山を見ようとすると近くの景色には、そこここにポプラが並び、そのすべてが、果てしなく高い空を、同じように仰いでいた。 5年生に進級した春、私は、Sに出会った。 静かで引っ込み思案、身体はあまり強いほうではなく、細くて肌が雪のように白い華奢な女の子、それがSだった。運動が大好きで男まさりに遊んでいた私が、なぜSと出会ったのか良く分からない。出会った瞬間などまったく覚えていない。ただ、私たちは急速に仲良くなり、いつも一緒にいるようになった。 Sはおとなしく、運動も自分からするような子ではなかった。体育の時間、スキーをするにもサッカーをするにも、私はSを引っ張りまわした。Sは「いや~楽しいねェ」なんて言いながら良く笑った。及び腰でゲレンデをボーゲンで滑り降りて、「いや~全然ダメさァ」なんてその白い顔で本当に良く笑った。 Sと私は良く、絵も描いた。画家かマンガ家になりたかった私(当時は本気だった)は、毎日毎日学校や家でノートにマンガを描きためて、Sに見せた。内容は単なるギャグマンガ。マンガを見たSは決まって毎日、「いや~anちゃんのマンガ、面白いねェ」と言う。人を笑わせることが大好きだった私は、そんなSの感想を糧にまた、新たなネタを搾り出すのに必死になった。 ** ** ** そんなSとの毎日に突如として降ってきたのが、「安室奈美恵」だった。 衝撃的だった。ダンスもファッションも歌も、最高にカッコイイ。 Sと私は、一気に安室奈美恵に夢中になった。 冬の校庭のゲレンデでも、帰り道でも、掃除中の教室でも、安室奈美恵を歌った。 ここが東京といかに離れていても、どうだっていい。 きっと口ずさんでいれば安室ちゃんはどっからでも気づいてくれる。 根拠不明の自信で、Sと私はどんな日にも安室奈美恵に盛り上がった。 当時、私の家ではそんなにテレビを見ていなくて、ドラマやバラエティなどもってのほか。一体どういう生活をしていたのかと聞かれればそれも困るのだけれど、とにかくテレビを見なかった。だから、私はもっぱら、Sの家でテレビに映る安室ちゃんを見た。録画したビデオを、何度も何度も擦り切れるまで見た。Sは小売店の長女で、決まって店に陳列したお菓子や飲み物をあさって部屋にこもった。夕方までずっと見て、Sの優しいお母さん(Sと良く似て色白美人!)にあいさつをして、帰宅する。そんな日が続いた。 ** ** ** ある日、Sが学校を休んだ。 良く覚えていないけれど、夏くらいだったと思う。 いや、Sが学校を休むことなど、珍しくはない。もともと体が弱かったし、ちょっとした風邪でも休んでいた。そんな日は決まって、私は空席のSの机を見ながら、「ちぇっつまんないの。ちぇっちぇっ」などとちびまる子ちゃんのように心の中ブツクサ言うのだ。朝からふてくされるのだけれど、午後にはすぐ忘れる。また次の日、Sが来るからだ。また明日は、マンガを描いたり安室ちゃんの話ができる。 だが、Sは次の日も来なかった。私はまた「ちぇっちぇっ」とブツクサ言った。 次の次の日もSは来なかった。 その次の日もSは来なかった。 一週間、Sは学校に来なかった。 私はいよいよ心配になった。Sはもしかしたら、いつもの風邪の欠席ではないのかもしれない。こんなに来ないことなどさすがに初めてである。来なくなる前はいつも通りのSだったし、いよいよ良く分からない。どうしたんだろう。担任の先生に聞いてみなければ。 先生は唇に手をあてながら、言う。「親戚のおばさんがね、体調悪いみたいで。」 私は、「ふーん、そうなんだ」と思った。そして「なんだよう。それならそうと言えよな」と、また、いないSに向かって心の中で「ちぇっ」と思った。 次の週もSは来なかった。 次の週も、その次の週も、Sは来なかった。 私はその間、Sが戻ってきたときにすぐ見せられるように、マンガをせっせと描き、安室ちゃんの雑誌の切り抜きをせっせと集めた。 ** ** ** マンガの冊数もだいぶ増え、安室ちゃんの切り抜きの数も膨大になった頃。 家に、電話がかかってきた。 Sだった。 いつもどおりの、おっとりとしたSだった。高く小さい、紛れもないSの声だった。Sが休み始めてから、どれくらいの時間が経っていたのだろう。良く覚えていない。一ヶ月だったのか、二ヶ月だったのか。またはもっと短かったのかもしれない。でも私にとって、その期間はあまりにも長く、長く、とてつもなく長かった。私はとにかく安心して、そして久しぶりにSと話せることに気持ちが高ぶって、とにかく嬉しかった。学校の授業のこととか、休み時間のこととか、行事のこととか、しゃべりまくった。いつもどおり、Sはゆったりとした相槌を打ちながら、私の話を聞いた。 ふと、どちらからだったか、Sの休んでいることについて話しはじめた。「先生に聞いたよ~」と私が言うと、Sは、「先生、なンて言ってた?」と言う。「え、だから、おばさんが体調悪いって。月寒か、どこだっけ、だから、親戚の家に、行ってるって。」 Sは一瞬黙り、「あーそうかァ、先生、そう言ってたんだァ」と言った。私は、戸惑った。「え、そうでしょ?」なに、違うの…?私の戸惑いは声になったかは分からないけれど、Sはゆっくりこう続けた。「それで、anちゃん、本当にそうだって思った?」 ・・・え?だって先生が・・おばさんが・・だって・・ 「ウチね、離婚したンだァ」 私は、危うく受話器を取り落とすところだった。 ただ何も言えずに、その先に続くSの言葉を、ボンヤリ聴いていた。 「そっかァ、先生、そう言ったんだ、そっかァ。いや~、anちゃんならきっと分かってくれてるって思ってたンだァ」 私は必死でSの言葉に相槌を打って、そのあと何をしゃべったか良く覚えていないけれど、とにかく話し終えた。どういう流れでそうなったかは分からないが、それぞれが代わって、私の母とSのお母さんとが話し始めた。店のこともあるので学校に姿を現さないSのお母さんと、私の母が話すのはおそらく初めてのことで、それでも深刻そうに長い時間話していた。 母の後姿をぼんやり眺めながら、私は色々なことを思い出していた。 Sが、家でのお父さんが乱暴でちょっと困っている、と言っていたこと。 Sの店で、ヤクザのようなめちゃくちゃ怖そうなお父さんを見たこと。 お父さんのことを、ポツポツとしゃべる、Sの困ったような苦笑いの顔。 毎日Sを校庭に連れ出す私。 毎日毎日、笑顔でそれに応えたS。 とにかく笑顔だったS。 あー わたしはおおばかやろうだ と、思った。 私は勝手に、体の弱い、引っ込み思案なSを、引っ張っている、あるいは守っている気でいた。外で遊ぶのって楽しいよ!私はSのこと分かっているから、私に任せろ!と、こういうつもりでいた。でもそんなの全然違っていた。引っ張る私に、Sはいつも笑顔だった。そのSの笑顔に、真の優しさに、私はただ包まれていただけなのである。その笑顔の内側には、家での大きな悩みを抱えていたにもかかわらず。 私は欠席するSの本当の理由を推し量りもせず、心の中でSに「ちぇっちぇっなんで来ないんだよう」とブツクサ言っていたのである。サイテーだ、と思った。それまでにぽつぽつと、私に家庭のことを話していたにもかかわらず。 「anちゃんならきっと分かってくれてるって思ってたンだァ」 Sの声が頭の中でよみがえる。 わたしはおおばかやろうだ ** ** ** 電話があった日から何週間かして、担任の先生に呼ばれた。 先生はそっと私に教えた。Sが、来週から登校する。 Sは休んでいた間はずっと、お母さんの実家で過ごしていた。その事実を私が知ったことを、先生はきっとSから聞いて、気を利かせて教えてくれたに違いない。私は帰宅し、母に、一番にそのことを報告した。報告しながら、なぜか涙があふれた。 それから、またSとの変わらぬ毎日が始まった。相変わらず外で遊んで、マンガを描いて、そして、安室ちゃんのビデオを見て雑誌を切り抜いた。 Sは相変わらず笑顔で、特に詳しいことを話もせず、私も特に詳しく聞かなかった。 Sのことを一番に考えられなかったジコチューなおおばかやろうな自分はもう捨てて、これから、Sとの時間を、大切にすればいい。 ** ** ** 小学校5年生が終わろうとする頃、東京への引越しが決まった。 Sは、私にJリーグの柄の、ポータブルテープレコーダーをプレゼントしてくれた。そして、二枚のテープをプレゼントしてくれた。一枚は、ある海外アーティストのアルバム。もう一枚には、テープの録音できる最大限まで、安室ちゃんの曲が何曲も入っていた。 引越しでバタバタし、本当にバタバタとみんなと別れ、とにかくあわただしく札幌を発った。 さっぽろ駅を出た寝台列車の中で、テープレコーダーを取り出した。テープも出す。テープのケースには、Sのギャグマンガのキャラクターの絵が描かれていて、曲名と、メッセージが、ところ狭しと並んでいる。安室ちゃんのテープを差し入れた。その頃の新曲、“don't wanna cry”が流れる。 私は、Sを思い出した。その瞬間、たがが外れたように、涙がボロボロと出た。流れ行く車窓の景色が、Sとの距離、札幌との距離がどんどん出来ていくことを意味している気がして、それがとてつもなく寂しく、苦しく、怖く、声も無く泣きまくった。寝台列車の簡易ベッドで横になり、それでもずっと安室ちゃんのテープを聴き続けた。うとうとしながら、何度も何度も、札幌の教室に戻る夢を、本当に何度も、見た。 ** ** ** ** ** ** ** ** ** 安室奈美恵を聴くと、Sとの毎日を思い出す。ひとつひとつが必ずしも鮮明ではないけれど、それらすべては間違いなく、私の限りなく大切な宝物のような日々なのである。 会社の同期のありがたきご好意で、best fiction tourを見に行く。安室ちゃんを生で見るなんてもちろん初めてである。Sに、メールを送ろう。なんて言うだろう。「いいなァ、チケットとるの大変だったしょ?」なんて言うかもしれない。おそらく安室ちゃんを見た瞬間、私は、あのSと何度もビデオを見たあの日々を、思い出すに違いない。 そして今年は、里帰りをしたとき、必ずSに会いに行こう。 お土産話に、Sは変わらず、ゆったりと、笑顔で、何度もうなずいてくれるに違いない。 ** ** ** タイトルは一度やってみたかったものをムリヤリあててみた♪ 一番記憶に新しいのはI君の卒論『本田靖春とその時代』(笑)。 いずれにしても、本エントリは時代を論じていないので正しくはないのだけれど。まいっか。
by anri_i
| 2009-02-09 00:51
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